大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和26年(あ)3968号 判決 1954年1月28日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人木村賢三の上告趣意第一点について。

所論は、判例違反をいうが、原判決は、本件における税務署長の被告人に対する犯則事実の通告、告発及び追起訴は一貫して事実の同一性が認められるから、本件追起訴は適法である旨判示している。されば、所論は、採ることができない。そして、所論甲一、二号証、本件追起訴状等によれば、原判決の右の判断は、当裁判所においても正当であると認められるから、刑訴四一一条を適用すべきものとも思われない。

同第二点について。

所論は、違憲の疑があるというのであるが、その実質は、単なる法令違反の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして、間接国税の犯則者に通告処分がなされた場合でも、犯則者がその通告の旨を履行しないため、成規の告発を経て一旦適法に公訴の提起があった以上、裁判所がその通告処分の内容に拘束される道理がないから(なお、大審院判決明治四四年五月二九日宣告判決録一七輯一〇〇七頁以下、明治三六年四月一七日宣告判決録九輯五五八頁以下参照)、原判決には結局所論の法令違反も認められない。

同第三点について。

第一審判決は、被告人の公判廷における自白を証拠としたものであるばかりでなく、そのほか、所論の顛末書の記載並びに反物の存在をも証拠としたものであるから、当裁判所屡次の判例に照し、所論の違憲は勿論、所論の違法も認めることはできない。

よって刑訴四〇八条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 真野 毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例